うそつきが好きよ
「電圧が9Vしかないのでバッテリーの交換をお勧めします。」
私はこの若い店員に真実を告げる決意をしました。
素性を明かして正しい道を示すのが先達の務めであると考えました。
しかし、もしかしたら加齢からくるそら耳かもと思い直した私は確認をする事にしました。
「電圧が9Vではセルモーターが回らないのではないでしょうか?」
私は出来る限り丁寧に彼に問いかけました。
すると若い店員は恐れを知らず、述べました。
「いえ 回ります。」
はっきり断言したのです。
疑惑は確信に変わりました。
しかし、親切な仕事熱心なガソリンスタンドの若い店員が嘘をついて
バッテリーの交換を勧めているとは
どうしても信じる事が出来ずに、最後に駄目押しで確認をしました。
「9Vというのはバッテリー端子間の解放電圧でしょうか?」
「通常、端子間の電圧が12Vを割り込むと始動が困難になると思いますが、如何でしょうか?」
若い店員は冴えない中年オヤジがいきなり"解放電圧"などという専門用語を吐くのを驚いていたように見えました。
私は更に畳み掛けます。
「失礼ですが、私は国家二級整備士を取得しています。現在は二輪専門ですが、四輪も基本的な知識は持ち合わせております。」
「一般的に始動可能なバッテリーの解放電圧は12.6V前後はあるはずですので、9Vというのは端子間電圧ではないと思われます。」
「4輪は現在、専門ではありませんので、車検整備は自分では行っておりませんが、先月の車検完了時に確認したところ解放電圧、充電電圧共に正常と聞いております。」
「無料点検は有難いですが、テスターの繋ぎ方や測定場所に間違いがあると思われますので今回はバッテリー交換に関しては結構です。」
なるべく仕事熱心な彼の自尊心を傷つけないように伝えたつもりでしたが、いかんせん無駄に年を重ねた学の無い中年オヤジの言う事ですので
どこまで伝わったか甚だ疑問です。
やがて給油も終わり代金を支払い
ました。
彼が私がどのようなバイクに乗っているのか、また何処に店があるのか、そしてこの道は良く通るのか聞いて来ましたので、私は丁寧に答えました。
「乗っているのはホンダイタリアのCB1000R,店と住まいは大宮でこの道は実家に行く際に良く通ります。」
残念ながら読心術を習得していない私には彼の心の中を読む事はできませんでしたが、私は"良く通ります"
すなわち"また寄る機会があります"
と告げたつもりでした。
彼は最後にマニュアル通りに
「有難うごさいましたっ!」
と巻き舌気味の挨拶で私を送り出しました。
次からはきちんとした知識で迷える子羊の如き一般ドライバーを導いてくれる事を望んで私はスタンドを後にしました。
しかし、冬はバッテリーに厳しい季節なのは言うまでもありません。
紺屋の白袴ではお客様に説得力がありません。
先程、愛用のポケットテスターで
端子間電圧を測定してきました。
結果は
解放電圧12.68V
充電電圧14.75V
(始動時ファーストアイドリング状態)
でした。
商売は大変だと思います。
でも、嘘はいけません。
いえ、決して彼が嘘をついて売り上げをあげようとしたのではないと今でも信じています。
それはきっと
"若さゆえのあやまち"
でしょうから。
ここまで読んで頂いた方々に心より感謝をいたします。
なんちゃって。
iPhoneから送信
私はこの若い店員に真実を告げる決意をしました。
素性を明かして正しい道を示すのが先達の務めであると考えました。
しかし、もしかしたら加齢からくるそら耳かもと思い直した私は確認をする事にしました。
「電圧が9Vではセルモーターが回らないのではないでしょうか?」
私は出来る限り丁寧に彼に問いかけました。
すると若い店員は恐れを知らず、述べました。
「いえ 回ります。」
はっきり断言したのです。
疑惑は確信に変わりました。
しかし、親切な仕事熱心なガソリンスタンドの若い店員が嘘をついて
バッテリーの交換を勧めているとは
どうしても信じる事が出来ずに、最後に駄目押しで確認をしました。
「9Vというのはバッテリー端子間の解放電圧でしょうか?」
「通常、端子間の電圧が12Vを割り込むと始動が困難になると思いますが、如何でしょうか?」
若い店員は冴えない中年オヤジがいきなり"解放電圧"などという専門用語を吐くのを驚いていたように見えました。
私は更に畳み掛けます。
「失礼ですが、私は国家二級整備士を取得しています。現在は二輪専門ですが、四輪も基本的な知識は持ち合わせております。」
「一般的に始動可能なバッテリーの解放電圧は12.6V前後はあるはずですので、9Vというのは端子間電圧ではないと思われます。」
「4輪は現在、専門ではありませんので、車検整備は自分では行っておりませんが、先月の車検完了時に確認したところ解放電圧、充電電圧共に正常と聞いております。」
「無料点検は有難いですが、テスターの繋ぎ方や測定場所に間違いがあると思われますので今回はバッテリー交換に関しては結構です。」
なるべく仕事熱心な彼の自尊心を傷つけないように伝えたつもりでしたが、いかんせん無駄に年を重ねた学の無い中年オヤジの言う事ですので
どこまで伝わったか甚だ疑問です。
やがて給油も終わり代金を支払い
ました。
彼が私がどのようなバイクに乗っているのか、また何処に店があるのか、そしてこの道は良く通るのか聞いて来ましたので、私は丁寧に答えました。
「乗っているのはホンダイタリアのCB1000R,店と住まいは大宮でこの道は実家に行く際に良く通ります。」
残念ながら読心術を習得していない私には彼の心の中を読む事はできませんでしたが、私は"良く通ります"
すなわち"また寄る機会があります"
と告げたつもりでした。
彼は最後にマニュアル通りに
「有難うごさいましたっ!」
と巻き舌気味の挨拶で私を送り出しました。
次からはきちんとした知識で迷える子羊の如き一般ドライバーを導いてくれる事を望んで私はスタンドを後にしました。
しかし、冬はバッテリーに厳しい季節なのは言うまでもありません。
紺屋の白袴ではお客様に説得力がありません。
先程、愛用のポケットテスターで
端子間電圧を測定してきました。
結果は
解放電圧12.68V
充電電圧14.75V
(始動時ファーストアイドリング状態)
でした。
商売は大変だと思います。
でも、嘘はいけません。
いえ、決して彼が嘘をついて売り上げをあげようとしたのではないと今でも信じています。
それはきっと
"若さゆえのあやまち"
でしょうから。
ここまで読んで頂いた方々に心より感謝をいたします。
なんちゃって。
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